我が国の透析治療は素晴らしく、欧米と比較して生存率が高いことが特徴です。現在新規透析患者の導入時平均年齢は69.2歳で、維持透析患者全体でも平均年齢は67.8歳とされております。
今後さらに我が国は高齢化社会が進み、透析患者の高齢化が予想されます。
透析治療には、良好な動静脈シャント(内シャント)が不可欠でありますが、今後高齢化が進むにつれ動脈硬化や静脈の脆弱化によりシャント作成が困難になるケースもあります。また内シャントを長期に使用するにつれ、シャント瘤やシャント感染などのシャントトラブルも増えることが予想され、血管外科での治療が今後増加するものと考えております。
また内シャントを長期に使用するにつれ、シャント瘤やシャント感染などのシャントトラブルも増えることが予想され、血管外科での治療が今後増加するものと考えております。
当科での治療
- 1:内シャント作成、修復術(シャントPTA) できるだけ自家静脈を用いた内シャントの作成・再建を考慮致します。 穿刺の問題や、自家静脈での再建が不可能な場合は人工血管での作成を致します。 内シャントは一旦作成しますと長期間使用もできますが、狭窄・閉塞を繰り返す場合もあります。 当科では、作成後は定期的にエコーでフォローし、閉塞する前にカテーテルで狭窄部を広げる治療も行います。 2023年度から当科はシャント用の薬剤コーティングバルーン(DCB)使用認定施設となりましたので、シャントの長期開存目的で使用しております。
- 2:シャント瘤修復術 吻合部や穿刺部に仮性瘤ができる場合があります。自家静脈や人工血管での再建、自家静脈でのパッチ形成術を行います。
- 3:シャント感染治療 感染したシャントを除去します。(人工血管含む)抗生剤の全身投与を行い、感染をコントロールしたのちに内シャントを作成します。全身状態により治療に時間を要する場合がありますが、当院は長期入院も可能です。 感染のコントロール、新しいシャントでの使用が可能と判断後に退院となります。
- 4:重症静脈高血圧、steal症候群の治療 シャントを作成した静脈が閉塞し、血液が逆流して手指が腫れあがってしまう静脈高血圧や、シャントに動脈血が多く流れすぎてしまい結果的に手の先に血液が流れなくなり、手が虚血状態になるsteal症候群があります。両疾患は、カテーテルで治療できることが多いのですが、重症の場合はバイパス手術の適応となります。
治療実績 2023年1月~2023年12月
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シャント増設:4例 シャントPTA:11例
手指壊死:腋窩動脈-尺骨動脈バイパス術:1例