1.救肢とは
糖尿病や透析患者さんに合併する下肢潰瘍。最初は小さな傷でも治療するタイミングが遅れると驚くような早さで悪化します。潰瘍から壊死に陥ると、早急に専門的治療を行わないと下肢切断の危険が高くなります。下肢切断は、患者さんの生活の質を落とすだけではなく、生命予後までも落としてしまいます。
① 創部へ十分な血流を流す確実な血行再建術
② 歩行機能を温存した創傷治療
③ 耐え難い足の痛みを和らげる疼痛管理
④ 創傷治癒を促す補助療法(LDLアフェレーシス、局所陰圧閉鎖療法、コラテジェン、OASISなど)
⑤ 血糖・栄養管理
⑥ 歩いて自宅に帰るための積極的な理学療法
上記の全てを指します。これらどれかひとつでも欠けてしまうと下肢救済治療は成り立ちません。
当院下肢救済センターは上記の専門的治療を高いレベルで行える施設であります。
当センターの特徴としては血管外科が主科となって患者さんが自宅退院するまで、上記治療の全てに責任を持って担当することです。
2.歩行獲得とは
どのような足の傷でも歩行能力を温存した救肢を目標としておりますが、残念ながら救肢できずやむなく下肢切断に至る場合もあります。下肢切断になってしまうと患者さんの生活の質を落としてしまうだけでなく、生命予後も不良となります。
透析患者さんで下肢切断となった場合の1年の生命予後は50%(2人に1人が亡くなる)といわれ、極めて不良であります。
しかし、この結果は理学療法の介入が不十分であったことも関係していると考えます。当院では60名以上の理学療法士が透析中も患者さんに関わり、フットケアチームと連携をとりながら義足作成から歩行獲得まで、計画的な積極的理学療法を行います。
2023年からは日曜、祝日も理学療法士が介入する方針となり、毎日積極的な理学療法ができるようになりました。
こうした歩行獲得を目指す社会復帰の支援も当センターは積極的に行っており、近隣の総合病院からの下肢切断患者さんの転院を多く受け入れ、歩行獲得して自宅退院して頂いております。
3.再発予防とは
救肢できた場合でも傷の再発は1年で10%といわれています。
足部骨格の変形や筋肉の退縮、歩行バランスの不安定などが原因で足部の荷重分散ができなくなり傷ができてしまいます。そのため患者さんには荷重軽減を考えたオーダーメイドの屋内用、屋外用のフットウエアを作成しています。
そして、退院後も定期的に外来で足に傷が無いか、足圧分布検査で問題なく荷重分散ができているかチェックしています。問題がある場合は迅速に治療を行い、近隣の透析クリニックと連携を取って傷のフォローを行うようにしております。
当センターの治療成績ですが、治療が難しいといわれる透析患者さんが全体の約70%を占めておりますが、創傷治癒率は80%を超えております。(2019~2023年で224肢を治療)
当センターの下肢救済治療について多くの講演依頼を頂き、全国学会でも活発に発表を行っており、当院は静岡県を代表する下肢救済センターであります。(詳細は下記ボタン「研究・業績」から参照してください)土曜日も血管外科・下肢救済センターは外来を行っておりますので下肢に痛みがある、傷がある患者さんがおられましたらお気軽にご相談ください。